近代香水の誕生秘話


私たちが日々使っている香水。


香水の原料である香料は古代エジプト文明まで遡ります。


太古から神への供物として人や獣が生贄として捧げられていたように、


高貴な香りが献上されてきました。古代エジプト人は芳香性の樹脂を焚き、


香りを神々に捧げ、煙が天と地をつなぐ道になるよう願っていました。


香水「perfume」の語源はラテン語のper(通して)とfumum(煙)に由来します。


香料は、王と神々だけが用いる貴重な代物でした。


やがて純粋で安定した精油を採取するアルコールや溶剤抽出する技術が開発され、


合成化学へと進歩し、近代香水へと至るのです。


19世紀末に香水が誕生し、20世紀にゆたかに花開き、21世紀にはさらなる発展を続けています。


古代エジプトでは、香りはよみがえり=再世につながると考えられていました。


王であるファラオが亡くなった時にはパイン(松)や香辛料、ミルラ、シダーなどの香油に


浸した布に包んだそうです。


またエジプト人は早くから、皮膚を滑らかにしたり、香りを纏うために芳香油を使いました。


女性は体から匂い立つよう肌に動物脂を垂らしたり、


香油を混ぜたロウを円錐状に固めて頭上に載せ、芯に火を灯し次第に溶け出すロウが


顔や体の表面を伝い全身が方向で包まれる仕組みを楽しんだそうです。


こうしたテクニックはクレオパトラの時代に最盛期を迎えました。


香りを溺愛した女王は御座船の帆に香料をたっぷりと染み込ませていたため、


遠く離れた川の下流からでも女王の来訪が分かったという逸話があります。


男たちの誰もがクレオパトラにひざまずいたというのも、彼女の美しさに感服してか、


それとも圧倒的な香りに惑わされてのことかはわかりませんが…。


同じような逸話はギリシア神話にも繰り返し登場します。


例えば海の精セイレーンが美声の次に、芳香で船乗りたちを魅了して


死に追いやった物語もそのひとつです。


芳香をつくるのは神官たちの役目であり、奴隷のヘブライ人にもその作業を手伝わせました。


やがて香料作りの技術を身につけた奴隷たちが逃亡すると、その技術も各地に広まっていきました。


古代ギリシアでも香りは珍重されました。「ギリシア神話」には神々と香りにまつわる逸話が多く、


当時の詩人らもたびたび香りについて綴っています。


ホメロスは香りの伴う風呂やマッサージを賞賛し、「癒す力」…今でいうとアロマテラピーの


効能を記しています。当時の考え、習慣の多くが現在にも受け継がれ例えばアポロにオスは


「香りは何といっても手首から漂ってくるのがよろしい」と語っているが、


香水を手首につける習慣は現代人にも通じるものです。


そしてギリシア人の香りの習慣はローマにも引き継がれ広く影響を及ぼしていきます。


ローマ人は日常生活でも芳香油をふんだんに使い、使い方は過剰でありました。


妻、奴隷、馬に鞍。私が素敵だと思ったのは陽を浴びると壁や床が香りを放つようにと、


家の建材であるモルタルに香油を染み込ませたりしたようです。


「おしゃれ」な香りという概念と、使い方のエチケットはこの時代に誕生しました。


今回はここまで。次回は中東です!

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